2010年03月06日

METライブビューイング『シモン・ボッカネグラ』

先週から今週にかけて「METライブビューイング」「シモン・ボッカネグラ」「ドミンゴ」等のキーワード検索でこちらにたどり着いた方がほぼ毎日おられたようです。感想等をアップしていたわけではない私……その方たちには申し訳ないです。
その『シモン・ボッカネグラ』ですが、私は最終日の昨日、どうにか観ることができました。以下、感じたことなどを簡単にメモ。

まず何よりも痛感したのが、ヴェルディの偉大さです。この作品でヴェルディはなんという音楽を、旋律を生み出したことか! 演劇性・雄弁・陰影・恐怖・美しさ・哀しみ・崇高さ……どうしてこの作品がメジャーにならないのか分からない。バリトンやバスが中心で華に欠けるから? 脚本が煩雑だから? いやいや……『オテロ』と並ぶか、それ以上の音楽をヴェルディはこの作品に与えていると私は思っています。ジェームズ・レヴァイン率いるMETのオケは、この音楽の素晴らしさを充分に伝えてくれる演奏をしてくれました。
プラシド・ドミンゴのタイトルロールですが、年齢を考えると立派に保たれている声のクオリティには感服したものの、この役がテノールの声で歌われるのには、分かって聴きに来たとはいえどうにもなじめないものを感じていました。しかしオペラが進むにつれ、全身全霊を込めてシモン・ボッカネグラになりきって歌い演じるドミンゴの気魄とオーラに引き込まれ、最期のシーンでは画面を直視するのに痛みを覚えてしまうほどでした(痛々しい、ではない)。さすがです。
他のキャストもなかなかでした。フィエスコを歌ったジェームズ・モリスは声に少し年齢を感じたものの、その存在感は代え難いものがあったと思います。ともすれば冷酷そのものにもなりかねないこの役ですが、人としての優しさ・ぬくもりが感じられる人物像にしていたのが嬉しかった。マリア=アメリアのアドリアンヌ・ピエチョンカは確か前にエアチェックでジークリンデを聴いたことがあります。硬質の鋭い強い声で、ドラマティックな歌唱を聴かせてくれました。個人的にはこの役はもう少し柔らかく歌われる方が好みなのですが……。ガブリエーレ役のマルチェッロ・ジョルダーニは初めて聴く歌手、中音域の響きがとてもきれいなだけに、時々なぜかふにゃっとした声になるのが非常にもったいない。今回私が特に素晴らしいと思ったのは、パオロを歌ったパトリック・カルフィッツィという歌手。もちろんこの人も初めて聴く人です。硬過ぎず柔らか過ぎず、ほどよい光沢を帯びた声はヴェルディものにぴったりでは。演技も的確で、狡猾な政治家であり人間的な弱さをも抱えたこの役を充分に表現していたと思います。

次回のMETライブビューイングは『ハムレット』、しかしオフィーリアを歌うはずだったナタリー・ドゥセイが降板とのこと……むむむ、どうしたものか……。
posted by ぶらっくたいがあ(元ユルシュール) at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | METライブビューイング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/142932126

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。