2010年06月29日

Wagner“Die Meistersinger von Nuernberg”MET 1953.1.10 Live

Richrad Wagner “Die Meistersinger von Nuernberg”

Hans Sachs : Paul Schoeffler
Veit Pogner : Josef Greindl
Kunz Vogelgesang : Thomas Hayward
Konrad Nachtigall : Algerd Brazis
Sixtus Beckmesser : Gerhard Pechner
Fritz Kothner : Mack Harrell
Ulrich Eisslinger : Emery Darcy
Augustin Moser : Joseph Folmer
Hermann Ortel : Osie Hawkins
Hans Schwarz : Lawrence Davidson
Hans Foltz : Lorenzo Alvary
Walther von Stolzing : Hans Hopf
David : Richard Holm
Eva : Victoria de los Angeles
Magdalene : Hertha Glaz
Ein Nachtwaechter : Clifford Harvuot
Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera House
Conductor : Fritz Reiner
Metropolitan Opera House, New York, 10.1.1953
(Walhall)

ビクトリア・デ・ロス・アンヘレスがレパートリーに入れていたヴァーグナーもののレパートリーは、エリーザベト(『タンホイザー』)、エルザ(『ローエングリン』)、そしてエーファ(『ニュルンベルクのマイスタージンガー』)。昨年市場に出回ったこのライヴ録音によって、彼女の歌うエーファに初めて触れることができた。
バイロイト出演経験のあるビクトリアだが、いわゆるヴァーグナー・ソプラノと認識されることはまずない。確かにヴァーグナーが彼女のレパートリーの中心にあったとは言い難いが、同時に、彼女の歌声にヴァーグナー諸役に求められがちな、ある種デモーニッシュな要素が欠けていることも、彼女のヴァーグナーものが無視されやすい一因かもしれない。そんな彼女の声に、市井の若い娘役であるエーファはぴったりではないだろうか、と聴く前から夢想していた。
はたして、彼女の歌うエーファは健やかにまっすぐに成長した、穏やかで心優しいお嬢さま。ヴァルターに対しての初々しさとほどよい甘やかさ、マイルドな愛らしさはもちろん、対ザックスにおいても友情以上恋愛未満の危うさはなく、どこか疑似父娘のような心の揺れと深い信頼・愛情が強く印象づけられる。ザックス役のシェフラーが鋭さに欠けたおっとりした歌唱なのもふたりの関係の健全さに拍車をかける。そういう点に物足りなさを感じる聴き手もいるかもしれないと感じつつ、こんなザックスとエーファもありだと思わせるコンビである。少なくとも、私は大好きだ。
ビクトリアの歌唱自体は、ゆったりした旋律の歌いまわしにその美質が最もよく現れているように感じる。まさしく、温かく包みこんでくれるような歌唱。特に中音域部分に関しては、これほどまでに柔らかい歌声・歌いまわしのエーファを聴いたのは初めてといっていい。一方、音符が細かく転がる個所やハイA以上の高音(第3幕の五重唱での高音が破綻したのは惜しかった!)はやや苦しげで、ソプラノ歌手ビクトリアの美点と欠点があらわになった演唱といえるが、あの独自の美声で描き出される、人間らしいぬくもりと落ち着いた愛情を感じさせるエーファは、彼女のファンではないワグネリアンも耳を傾ける価値がある。
ザックスを当たり役としていたシェフラーは初めて聴いた時は鼻にかかったような声とどこか地味で起伏に乏しい歌唱に食い足りなさを覚えたが、何度か聴いてゆくうちに渋い味わいが伝わってくる、するめのような歌唱で今はお気に入り。ペヒナーは当時としてはたいへん真面目な歌いぶりのベックメッサーで、その歌唱は私の抱いているベックメッサーのイメージに近いかもしれない。他にもグラインドルにホップと強力な歌手が中心だが、ホップは舞台が進むにつれやや疲れがみえてくるように感じられてちょっと惜しい。
ライナーのタクトのもと、METのオケは特に弦がたっぷりと、ゆったりと聴かせてくれる。もちろんライヴ特有のミスや粗さはあるものの、この名作の音楽世界にひたらせてくれる演奏で、今まで聴いた『マイスタージンガー』の中でもかなり好きな部類に入る。惜しむらくは、当時のMETの慣習であったカットが入っていること。噂には聞いていたが、第3幕、ザックスが感情を爆発させるくだりがすっぽり抜けていた時にはさすがに腹が立ってしまった。
posted by ぶらっくたいがあ(元ユルシュール) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス 録音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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