2011年01月12日

2011.1.10 劇団四季『サウンド・オブ・ミュージック』(四季劇場・秋)

2階7列下手側。

マリア:土居裕子
トラップ大佐:村俊英
修道院長:秋山知子
エルザ:西田有希
マックス:勅使瓦武志
シュミット:大橋伸予
フランツ:青山裕次
シスター・ベルテ:佐和由梨
シスター・マルガレッタ:矢野侑子
シスター・ソフィア:あべゆき
ロルフ:亀山翔大
リーズル:池松日佳瑠
フリードリッヒ:鳴戸嘉紀
ルイーザ:嶋村英里
クルト:島内優太郎
ブリギッタ:石井日菜
マルタ:清水乃愛
グレーテル:西山寿奈
平田英夫指揮

本年初観劇。

マリア役の土居裕子は、私が中学生だった頃、音楽座のスターとして大活躍していた。映像などで観聴きしてその美声は知っていたが、今まで生の舞台に触れる機会に恵まれなかった。今回彼女が客演という形でこのプロダクションに参加すると聞き興奮したのは私だけではあるまい。願わくばもう少し早くにこの役を歌っていれば、と思ってしまったのも事実だが、彼女には声楽的にもキャラクター的にも、ぴったりの役に思われた。
初めて生で聴く土居の歌声は、澄み切った水が浸みわたるように劇場じゅうに広がる、透明感のあるソプラノだった。声そのものは張り上げているようにはほとんど聴こえない(唯一、高音を張る際の発声には声楽出身という経歴を感じさせた)のだが、決してオーケストラ(※)にも他の歌手たちにも負けない(時に圧する)その声量には驚いた。
歌声と同じかそれ以上に感銘を受けたのはその演技力・存在感である。非常に小柄な土居マリアは、最初のシーンではまさに天真爛漫にして荒削り、少女というよりまるで少年のようにすら見える。すでにベテランといってよいキャリアの彼女だが、2階席から観る限りでは実年齢はほとんど感じさせなかった。そんな少年のような少女が、初めての家庭教師に戸惑い試行錯誤しながらも子供たちのお姉さんのような「先生」として成長し、恋を知ることでさらに少女から女へと変化してゆく。今まで覚えたことのない自分自身の感情に対する恐怖と動揺、修道院長に諭され決然と己の気持ちに向き合うことで大人の「女」へのステップを上がり始める、その過程が実にはっきりと伝わってきた。トラップ大佐と愛を確かめ合う際の満たされた表情。結婚後、毅然とした態度で家族を守ろうと奮闘する彼女にもはや少女の面影はなく、「妻」そして「母」の顔になっている。感情の流れが実に自然に、そして成長の過程が手に取るように伝わってくるマリアだった。演技や台詞まわしが良い意味で従来の四季の芝居とは異質だったこともプラスに働いていたのかもしれない。それが団員たちの間で浮くのではなくかえって団員たちにも良い影響を及ぼしているようにも感じられた。
トラップ大佐役の村俊英は、『オペラ座の怪人』のタイトルロールを演じているのを2回観たことがある。小柄で大きな顔、ずんぐりとした体形の彼がスーツ姿で最初に出てきた時には、この役に対して抱いていたイメージとのあまりの違いに(分かってはいたものの)戸惑わずにはいられなかったが、次第に「こういうトラップ大佐もアリだな」と思えてきた。エルザに優しい言葉をかけられた時の実に嬉しそうに照れた笑顔、子供たちの扱いやマリアとの関係に悩みあたふたする様子、マリアと相思相愛と分かった時の喜びに満ちた表情。もともと武骨で朴訥とした雰囲気をまとっているだけに、実にかわいらしいのだ。その一方、己の信念は断固として曲げない。声楽畑出身の彼は地声も非常に強い響きで、ただならぬ迫力があった。
歌については、重めのバス=バリトンの美声であくまで丁寧に歌っていたのが印象的であった。土居マリアの澄んだソプラノと意外に相性が良かったのが嬉しかった。

初見のキャストは他にロルフとリーズル。池松日佳瑠のリーズルはまだ多分に子供の面影を残した思春期の少女そのもので、実にキュート。癖のない素直な発声と歌唱にはたいへん好感を持った。亀山翔大のロルフはハンサムながらどことなく落ち着きのない遊び好きな青年風で、それだけに第2幕での無表情が際立っていた。こういうタイプのロルフは(映画も含め)観たことがないだけに面白かった。この日の子供たちのアンサンブルは5月に観た舞台に次ぐまとまりの良さ。それぞれの個性もしっかりときわだっていて、本当の兄弟姉妹のように見えた。

土居裕子マリアがお目当てでもあった今回の観劇であったが、彼女のミュージカル女優としての実力と素晴らしさに感動したのはもちろん、肝心かなめの舞台そのものを心から楽しむことができたことが何より嬉しかった。本年初観劇、いい舞台を観ることができた。


(※)もっとも、小編成というにもためらわれる規模のオーケストラではあるが。
posted by ぶらっくたいがあ(元ユルシュール) at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台鑑賞(ミュージカル) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/180216131

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。